| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-08 (Oral presentation)

機能的・構造的樹木モデルを使用したブナの物質生産・収支の推定

*梅木清,三上怜子,本條毅(千葉大・園芸),菊沢喜八郎(石川県立大・環境)

樹木の種特性を定量的に理解したり、特定環境下における挙動を予測したりするためには、光合成などの個葉機能を理解するだけでは不十分で、個体レベルでの機能理解が必要となる。さらに、個体の構成要素(複数の葉と茎)の機能を個体レベルで統合するためには、個々の機能を単に合計するのではなく、要素間の相互作用を再現しつつ統合する必要がある。本研究では、ブナ稚樹の個体レベルでの物質生産を定量的に理解するため、シュートの位置とシュート内の構造の実測データ等に基づき機能的構造的・樹木モデルを構築し、これを用いて単独で生育するブナ稚樹の物質生産と物質収支を推定した。機能的構造的・樹木モデルの中では、葉にあたる光の強度が他の葉の位置と光線の入射方向によって決められるなど、個葉間の相互作用が再現されている。

3次元空間内のシュートの位置と当年シュート内の葉・茎の数・質量の測定を行った。この測定から得た情報と、開葉・落葉フェノロジー、光−光合成曲線、光合成能力の加齢に伴う減少を表現するモデルを合わせて、光合成量と呼吸量を計算する機能的構造的・樹木モデルを構築した。このモデルにより、直接測定が不可能な個葉・シュート・個体の物質生産と物質収支を推定した。

個葉の積算物質収支はマイナスの値から出発し、生育期間終了まで単調増加することがわかった。開葉後18日目頃に収支がプラスとなり、最終収支は初期投資の3.4〜4.5倍となった。個葉の位置により他の葉による被陰の程度が異なり、個葉間の最終収支のばらつきが生じていた。


日本生態学会