| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-14 (Oral presentation)

光環境変動下における常緑広葉樹実生の成長

*河原崎里子 1,相川真一 2,田内裕之 2,可知直毅 1,石田厚 3(1首都大,2森林総研,3京大)

照葉樹林はギャップ更新し,森林構成樹種の実生はギャップ形成時に被陰から強光下への急激な光環境変動を経験する可能性が常にある。ギャップ形成による光環境の改善が成長を促進する場合と、強光によってダメージを受ける場合の両方が考えられる。そこで、冬と夏の急激な光環境の変動に対する実生の成長反応を調べた。シイ・カシ類とイスノキ,クスノキなど14種のポット植えの当年実生を被陰下で9月に栽培を開始し,一部を終始被陰下で、一部を冬(2年目、1月)に、一部を夏(同8月)に裸地へ移動させ、同10月まで栽培し、成長パラメーターを決定した。以下、結果の一部である。

相対照度6%被陰区の実生は葉面積比LAR、葉重比LMR、葉面積比重SLAが大きく、つまり、葉への分配が大きく、かつ、薄い葉を広げることのできる種で相対成長速度RGRが大きかった(クスノキ、イスノキなど)。また、RGRが大きな種は2年目葉を多く出葉していた。

被陰区から冬に裸地に移動した実生は、終始被陰下で栽培した実生よりも5種でRGRが小さくなったが(アカガシなど)、9種では変わらなかった。この処理区ではRGRが大きな種は純同化速度NARが高いことによっていた。また、RGRと2年目葉の出葉数に相関はなかった。被陰下で見られた形態的な調節でRGRを高くすることからのシフトを伺わせた。

被陰区から夏に裸地に移動した実生では、RGRが終始被陰下で栽培したものよりも4種でRGRが大きくなっていた(ウバメガシなど)。その他の種は変わらなかった。夏に裸地に移動した実生のRGRはLAR、SLA、2年目葉出葉能力などに依存していて、被陰区と大きな違いはなかった。

照葉樹林構成種実生の成長へのギャップ形成の影響は大きくないと考えられる。


日本生態学会