| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-05 (Oral presentation)

半島マレーシア丘陵地フタバガキ林における、選択伐採(択伐)が土壌呼吸に与える影響

*高田モモ,山田俊弘,奥田敏統,保坂哲朗(広島大・総科),梁乃申(環境研),Wan Rasidah W. K.,Fletcher C., Shamsuddin I.(FRIM)

現在も熱帯域で急速に進んでいる森林伐採は、土壌呼吸に影響を与える土壌環境を変化させる可能性がある。土壌呼吸は森林生態からのCO2放出量の大半を占めるため、森林の炭素収支の正確な推定には、伐採が土壌呼吸に与える影響の評価が重要である。しかし熱帯林での研究事例は極めて少ない上、土壌呼吸の受ける影響に明瞭な傾向が示されていない。熱帯林の土壌呼吸の空間変動が他の気候帯の植生に比べて大きいため、伐採の影響を検出するには、同一林分、同一地点で、伐採前後の継続的測定が必要である。本研究では、伐採が土壌呼吸に与える影響を1伐採木周囲の変化、2林分スケールの変化に分けて調査を行った。調査は半島マレーシア北部のTemengor Forest Reserveで実施し、2010年12月に伐採が行われた林班を対象とした。その結果、伐採後一年以内の伐採木周囲では変化がないことが分かった。これは、伐採木がまだ生存している、もしくは伐採木の分解によるCO2放出が生存時の根呼吸を上回らないことが原因であると考えられる。一方、林分スケールは土壌呼吸速度が約19%低下することわかった。これは林冠木がなくなったことによるリター量の変化などが原因であると予想される。伐採による土壌呼吸速度の減少量は、伐採前の土壌呼吸速度の空間変動(95%信頼区間)よりも小さいとは言え、この減少量は半島マレーシア低地熱帯雨林で推定されたNPP(8.85 tC/ha/yr)に匹敵する。


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