| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-06 (Oral presentation)

熱帯泥炭林における土壌呼吸モデルの開発

平田竜一,平野高司(北大院農)

熱帯泥炭林は1~10mの泥炭上に生育する森林で、ボルネオ島やスマトラ島など、主に東南アジアに広く分布している。熱帯泥炭林は地球表面面積の0.25%を占めるに過ぎないが、土壌有機物としては地球上の3%を占める。近年、植林や火災により、熱帯泥炭林は急激に減少しており、その結果、大量の炭素が消失している。森林の保護、開発、防災のため、熱帯泥炭林の炭素管理は重要であり、生態系モデルはこのような炭素管理に有用である。本研究では、熱帯泥炭林を対象とした生態系モデルに組み込むことを想定した泥炭の土壌呼吸モデルの開発を行った。

従来のモデルの土壌呼吸放出量は、地温と土壌水分によって規定されているが、熱帯泥炭林では主に地下水位によって制御されている。また、水分量に対する土壌呼吸量の応答も鉱質土壌とは大きく異なっている。そこで、本研究では、地下水位の推定方法と水分量に対する土壌呼吸量の推定式の提案を行う。

熱帯泥炭の地下水位の推定方法には一層のタンクモデルを用いた。タンクには一つの流入孔と三つの流出孔を設けた。流入孔からは降雨量による流入と蒸発散による流出が行われる。流出孔からは、水位と流出孔の差に比例して水分が流出していく。これらの水分の出入りにより、地下水位は変動する。土壌呼吸は地下水位が0mから低下するに従い、初めは減少する。しかし、0.5m程度で最低値に達した後、地下水位がさらに低下すると今度は土壌呼吸は増加を始めた。これは、土壌呼吸の生成部位が上層から下層に移動したためと考えられる。そこで、地下水位が0m以上、0~0.5m、0.5以下で地下水位と土壌呼吸の関係式を策定した。

本モデルの検証はインドネシア・パランカラヤの熱帯泥炭林の土壌フラックスデータを用いて行った。地下水位、土壌呼吸とも概ね観測地とモデルによる推定値は一致した。


日本生態学会