| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-14 (Oral presentation)

コンタクトプロセスを用いたクローナル植物における病原体伝播モデルの解析

*酒井佑槙(北大,環境),高田壮則(北大,地球環境)

クローナル植物は、種子によって繁殖する方法以外に、根・茎・葉などの栄養器官から個体を繁殖(栄養繁殖)する植物であり、親株と遺伝的に同じ個体をふやすことが出来るため、種子繁殖のように遺伝子組み換えによって病気にかかりにくい遺伝子を作ることができない。その為、栄養繁殖では、親株が病気にかかっている場合、子供も病気に感染しやすくなる。つまり、栄養繁殖で繁殖する植物個体群においては、ある個体が病気に感染すると、多くの個体が同一の病気に感染し、個体群が絶滅する恐れがあると考えられる。そこで、本研究ではこのような病原体伝播の問題をコンタクトプロセスと呼ばれる数理モデルを用いて考える。コンタクトプロセスは、伝染病の伝播を表す簡単なモデルとしてHarris(1974)によって導入され、接触過程や接触感染過程とも呼ばれる。数学的には配置空間に値をとる連続時間上のマルコフ過程に属している。グラフの各頂点に人がいると考えると、健康な人はグラフ上で隣にいる病人の数に比例した感染率λで病気に感染すると考える。本研究では、二次元格子におけるコンタクトプロセスを用いて、クローナル植物の繁殖過程と病原体の伝播過程の二つのモデルを構築する。ここで、モデルを二つ構築するのは、植物の繁殖と病原体の伝播のタイムスケールの違いを考慮したためである。植物は、繁殖率pで隣接する格子点(空地)に繁殖し、死亡率dで死亡するとする。また、植物が空間を占めた後、病原体が空間中に侵入し、病原体の伝播力(感染率)λで隣接する格子点(健康な植物)に伝播する。さらに、感染した植物は死亡率eで死亡する。上記のモデルに対して、ペア近似と呼ばれる手法を用いた解析を行った結果、平衡状態が2次元の自由度を持つことが分かった。今回の発表では、この2次元の自由度を持つ平衡状態に関して安定性解析を行うことで、植物が絶滅せずに生存できる条件を求める。


日本生態学会