| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-14 (Oral presentation)

道頓堀川における付着性微生物群集構造の比較解析

*松井一彰, 伊坪宏治, 近藤章弘, 石川将之, 麓隆行, 近畿大・理工

河川の河床石の表面に形成されるバイオフィルム(微生物膜)は, 有機物の吸着や分解を通じて河川の水質改善に寄与しているといわれている. 人工的に護岸された場所が多い都市河川では, 自然河川の河川床とは異なる微生物種によるバイオフィルムが形成され, 栄養塩吸着能力にも違いがある可能性が高いが, その実情はほとんど明らかにされていない. そこで本研究では, 都市河川におけるバイオフィルムの性状と特性を明らかにすることを目的に, 試験片を用いたバイオフィルム形成実験を実施し, 形成された微生物群集構造と含有栄養塩量について検討した.

護岸建材として使用される コンクリート材, 木材由来樹脂, 石材を用いた試験片を作製し, 大阪・道頓堀川にて夏季(7月〜8月), 秋季(10月〜11月), 冬季(12月)のそれぞれの時期に2週間の現場浸漬実験をおこなった. 材料表面よりバイオフィルムを回収し, 細菌群集構造, 細菌数, クロロフィルa量, 含有栄養塩(TN, TP)量について測定した.

試験片上のバイオフィルム中の細菌数についてみると, 冬季の細菌数は夏季・秋季の10〜20%程度であった. しかし材料間での細菌数を比較しても有意な差はみられなかった. 一方, バイオフィルムの細菌群集構造については,季節だけでなく材料間でも異なる群集が形成されていることが示された. また, 石材や木材由来樹脂上に形成されたバイオフィルム中の栄養塩量は, コンクリート材上のバイオフィルム中の量の約2倍となることがわかった.

これらの結果より, バイオフィルムの微生物群集組成や栄養塩吸着能は, バイオフィルムが形成される基板材料毎に異なっている可能性が考えられる. 同時に測定した河川水中のデーターとあわせて, 細菌群集構造の違いや栄養塩吸着能の違いを生じさせる要因について考察してみたい.


日本生態学会