| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-02 (Oral presentation)

岐阜市のため池における魚類相

*向井貴彦,古田莉奈,古橋芽(岐阜大・地域)

岐阜市は,岐阜県の平野部から山間地に移行する位置にある面積約200平方km,人口約41万人の地方都市であり,市内の河川においてハリヨ,ホトケドジョウ,デメモロコ,各種タナゴ類といった希少魚種の生息が確認されている.しかし,里山生態系の重要な要素である灌漑用ため池の生物相調査はこれまでおこなわれておらず,止水域を好む希少魚の現状や外来魚の侵入状況は不明であった.そこで,本研究では岐阜市内のため池における魚類相の調査をおこない,保全の必要性について検討した.

調査は,岐阜市のため池台帳に記載された48地点中の41地点についておこなった.魚類の採集はタモ網とモンドリを用いておこない,地上からの目視確認もおこなった.また,2010年度に岐阜市が緊急雇用対策事業としておこなった池干しによる外来魚駆除の記録も参照した.その結果,4地点では魚類の生息が見られず,残り37地点から24種の魚類が確認できた(1地点あたり平均4種).最も確認地点が多かったのはコイ(23地点)であり,その次にフナ類(ゲンゴロウブナ含む)(22地点),ブルーギル(13地点),オオクチバス(12地点)と,上位4種が釣り等を目的として放流された魚種であった.ブルーギルもしくはオオクチバスの生息する池では(コイとフナ類以外の)他の魚種が有意に少なかった.

近隣の市町村のため池に生息地が残るウシモツゴやカワバタモロコのような絶滅危惧種の生息は確認できず,東海地方固有の希少魚であるトウカイヨシノボリは3地点で確認されたが,分布が一部地域のみに限られており,宅地開発の進んだ地域には国内外来魚のシマヒレヨシノボリが多く分布していた.在来種のモツゴについても,中国大陸や西日本から侵入した外来mtDNAを持つ個体が確認された.これらのことから,岐阜市のため池における在来魚類相は危機的状況にあることが示された.


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