| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-21 (Oral presentation)

南極に見つかった外来イネ科植物はどこからやってきたか

*辻本惠(総研大・極域), 伊村智(極地研)

南極の陸上生態系は、構成種数が少なく生態系の構造が単純であるとともに、在来の生物相の生活史戦略は外来種と競争する能力が限られているため、外来種の影響を受けやすいと考えられている。現在南極地域においては、100種以上の外来高等植物の移入が報告されている。それら外来高等植物の生育は亜南極地域と南極半島域に限られており、環境がより厳しい大陸性南極域での報告はなかった。しかしながら、1995年7月に、大陸性南極域に位置する昭和基地近くの露岩域において、外来イネ科植物の生育が確認された。

本研究では、オオスズメノカタビラ(Poa cf. trivialis L.)と同定されたこのイネ科植物を形態の特徴から再同定を行い、種の特定を行うとともに本植物の大陸性南極での移入成功の要因を考察した。形態の特徴から、昭和基地付近に生育していたイネ科植物はノルウェースバールバル諸島のスピッツベルゲン島の固有種であるPuccinellia svalbardensis Rønningと同定された。本結果により、南極で発見された外来植物が北極を起源として持ち込まれた可能性が示唆された。本研究により、北極を含む環境条件の類似した地域からの南極への繁殖体の持ち込みの危険性が具体的に示された。


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