| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-20 (Oral presentation)

天然生針広混交林の炭素貯留量の長期変化-林分タイプの違いに注目して

*南雲未智,井上太樹(北大院・環境科学),吉田俊也,柴田英昭(北大・北方生物圏FSC)

森林生態系は、グローバルスケールでの炭素吸収・貯留に重要な役割を果たしており、その効率的な増加を図るためにさまざまな施業方法の検討が行われている。北海道の主要な森林施業方法の一つである択伐は、皆伐とは異なり、部分的な伐採によって森林を管理する方法で、木材生産と他の生態系機能との両立を図る上で有効であると考えられている。択伐においては、収穫対象となる上層木の蓄積の増減にのみ焦点があてられているが、森林生態系の炭素貯留機能を評価するうえでは、上層木以外の構成要素(土壌や下層植生)についても評価することが必要である。そこで、本研究では、北海道北部の天然生針広混交林を対象として、これらを含む生態系全体の炭素貯留量を推定することを目的とした。伐採やその後の回復を反映した、林分の発達段階ごとの推定を行った。

北海道大学中川研究林(44°48’N, 142°15’E)で調査を行った。本研究では長期の地上観測と航空機LiDAR測量の結果を用いた定量化を試みた。ここでは、森林の炭素貯留量は、上層木の状態と地形によって決まると仮定し、面積6.7haの調査地を10m×10mを単位とした林相カテゴリー(植生高、樹種、地形を考慮)に区分した。また、森林の構成要素を6つ(上層木、下層木、下層植生、枯死木、リター、土壌)に区分し、各項目について林相カテゴリーごとにサンプリングを行い、現存量と濃度から炭素貯留量を求めた。

若い発達段階での炭素貯留量は、尾根で多くなる傾向がみられた。また、尾根では広葉樹が優占する箇所の方が、斜面では針葉樹が優占する箇所の方が炭素貯留量は多い傾向がみられた。施業開始から30年時点での林分全体の炭素貯留量は、230Mg C ha-1程度と見積もられ、構成要素ごとの比率は、上層木とその他の構成要素が約半数ずつ占めていた。

森林の構成要素ごとにみた貯留量の傾向から、これらの結果について考察する。


日本生態学会