| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) I1-05 (Oral presentation)

矢作川河畔における流程による生息種の変化

洲崎燈子(豊田市矢作川研)

愛知県中央部を流下する一級河川矢作川では1995年以降、豊田市が自然環境に配慮した河川整備を実施するため、上流から中流にかけての複数の地点で豊田市矢作川研究所による陸生生物相の調査が行われてきた。この結果に国交省が下流域で実施している河川水辺の国勢調査の結果を加えて生物マップを作成し、矢作川において主要な植生と生物種が流程に沿ってどのように分布しているか確認し、保全等の対策について検討した。生物マップの作成には矢作川研究所が1995〜2007年にかけて河口から37.0〜73.0kmで実施した生物相調査と、国土交通省が2001〜2004年度に河口から0.5〜31.0kmで実施した河川水辺の国勢調査のデータを用いた。調査地点数については高等植物が30地点、昆虫は22地点、鳥類は18地点、哺乳類が23地点となった。植物772種、昆虫670種、鳥類136種、哺乳類14種についてマップを作成した。主要な植物の分布パターンは全域に分布するもの(エノキ、ムクノキ、アベマキ、オニグルミ、ネコヤナギ、マダケ、ツルヨシ、チガヤなど)、上〜中流を中心に分布するもの(ケヤキなど)、中〜下流を中心に分布するもの(カワヤナギ、ジャヤナギなどのヤナギ類)の3種類に大別された。また、上記の種が優占する植物群落については全域に分布するもの(竹林、草地群落)、上〜中流に分布するもの(ケヤキ林、アベマキ林)、中流に分布するもの(ムクノキ─エノキ林、コナラ林)、中〜下流に分布するもの(ヤナギ林)があることが分かった。動物についてはエノキを食草とするオオムラサキやケヤキの大木に営巣するオシドリなど、植生に関連した分布パターンを示す稀少種が複数確認され、上〜中流に分布するムクノキやエノキ、ケヤキ、アベマキ等を主体とする高木林を保全することの重要性が示唆された。


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