| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) I2-15 (Oral presentation)

全国24湖沼における50年の漁獲量トレンドの推定

*松崎慎一郎(国環研・生物生態系セ),角谷拓(国環研・生物生態系セ)

湖沼生態系において、漁業資源は重要な生態系サービスの一つである。その持続的な利用を実現するためには、資源量の長期的な変化を把握することが必要不可欠である。資源量の長期トレンドを知るためには、努力量で補正した漁獲量(catch per unit effort ; CPUE)を用いる必要がある。しかし、これまでに湖沼において、漁業資源のCPUEの長期トレンドを明らかにした研究は少ない。

本研究では、日本国内24湖沼において漁獲量と努力量に関する統計情報を収集し、状態空間モデルを用いて各湖沼における約50年にわたるCPUEの長期トレンドを推定した。すなわち、漁業・養殖業生産統計年報から毎年の総漁獲量(魚類・エビ類・貝類を含む)を、漁業センサスから5年ごとの総努力量(日数×人数)のデータを収集した後、統計情報の欠損値の補完や時間的な自己相関の考慮が可能な状態空間モデルを構築し、湖沼ごとにCPUEを推定した。

解析の結果、湖沼ごとに異なる長期トレンドのパターンがみられた。放流が盛んに行われているサケ科魚類やシジミが主な漁獲物である網走湖・能取湖・小川原湖・十三湖・宍道湖では、資源量が増加傾向もしくは一定であった。それに対し、コイ科魚類が主な漁獲物である霞ヶ浦・北浦・涸沼・北潟湖・三方湖・諏訪湖などでは1980年以降資源量が減少する傾向を示した。また十和田湖では、資源量の変動が非常に大きかった。本解析では漁獲効率や漁獲物の変化を考慮していないため、トレンドを過大・過小評価している可能性はあるが、これまでの漁獲量のみの評価と異なり、多数の欠損値を含む長期データを統合解析することでCPUEのトレンドを明らかにした意義は大きい。また湖の漁獲量・努力量に関する統計は年々縮小傾向にあるが、資源量の評価・予測のためには両データを継続的に収集する新たな体制が必要である。


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