| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-11 (Oral presentation)

カエルの不動行動の対捕食者戦略上の機能

*西海 望・森 哲(京都大・理・動物)

カエルはヘビと対面したとき、そのまま動かずにいることがある。この現象は「不動」と呼ばれ、捕食者に対する防御行動の一つとして考えられている。しかし、その定量的な分析は行われておらず、不動が捕食者に対してどのような効果を持っているのかは明確にされていない。我々はこの不動がどのような状況で行われるのかを調べ、その状況下で不動がヘビの獲物探知にどう影響を与えているのかを実験下で調べた。

トノサマガエルとシマヘビを大型の水槽に入れ、ビデオを用いてそれぞれの行動を観察した。不動が行われる状況を調べるに当たっては、カエルの移動頻度に影響する要因として、ヘビの存在、ヘビの運動状態、ヘビとカエルの距離を測定した。不動がヘビの獲物探知に及ぼす影響を調べるに当たっては、ヘビの接近や咬みつき等の捕食行動を引き起こす要因として、カエルの運動状態及びヘビとカエルの距離を測定した。

カエルの不動は、遠距離で動いているヘビに対して行われた。また、ヘビが動いていない状況下では、カエルはヘビが存在しない場合と同様の移動を行った。動いているヘビとカエルの距離が縮まるとカエルは不動をやめ逃走した。これらの結果から、カエルはヘビをその動きで認識し、遠距離では不動、近距離では逃走を使い分けていることがわかった。一方、ヘビの捕食行動については、遠距離では動いているカエルに対してのみ反応し、近距離ではカエルの動きの有無に関係なく反応した。この結果から、ヘビはカエルを認識するのに遠距離ではカエルの動きが必要であり、近距離ではカエルの動きは必要ではないことがわかった。したがって、カエルの不動は遠距離ではヘビに気づかれない効果を持つことがわかり、距離に応じてカエルはヘビによる捕食を逃れる上で適切な不動の使い分けを行っていることが明らかになった。


日本生態学会