| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-07 (Oral presentation)

AFLP分析によるハクバサンショウウオの個体群構造推定

*北野 聡(長野環保研), 懸川雅市(三鷹高), 岸 冨士夫(しろうま自然の会), 高田啓介(信州大・理)

ハクバサンショウウオ(Hynobius hidamontanus)は長野県内では白馬村内のごく限られた山麓湿地に生息する小型サンショウウオであるが,近年の湿地の埋め立てや道路整備,開発等により生息域の減少と分断化が進行し,環境省レッドリストで絶滅危惧IB類,長野県レッドリストで絶滅危惧IA類に区分されている.本種の保全にあたっては,生息個体数や産卵数のモニタリングと同時に,遺伝的多様性や集団構造についても把握してゆく必要があるが,遺伝的側面についての情報はこれまでほとんど得られていない.そこで本研究では,ミトコンドリアDNAの塩基配列情報およびAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)マーカーを利用して,生息地域内の集団構造を把握することを目的として行った.調査にあたっては,数キロ四方の生息地域内にある4箇所の主要な産卵湿地からそれぞれ約25個体の親個体から組織片を採取して分析に使用した.まずミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列(約400bp)には当該地域内で変異が確認されなかった.一方,AFLP分析では約200バンドに多型が確認された.AFLPのバンド共有率に基づいて主座標分析をしたところ,同一集団の個体が比較的類似したパターンを示す事例が見られた一方で,変異に富み収束しない集団も認められ,生息地域内での明瞭な分断状況は確認できなかった.


日本生態学会