| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) K2-17 (Oral presentation)

大発生したマイマイガ北海道個体群の21年間の動態と密度依存性

*東浦康友・山口博史(東京薬大・生命科学)

マイマイガは、カラマツ林や広葉樹林でたびたび大発生する昆虫である。しかし、大発生に至る個体群動態の記録はほとんどない。発表者らは、北海道美唄市のシラカンバ林で2007年から2009年の大発生に至る過程を記録した。

マイマイガは、1雌がすべての卵を1卵塊として産卵するので個体群動態の解析に好都合である。調査は、1974年から1982年の9年間には約1haの林で、1991年から2011年の21年間は0.2haの林で、いずれも卵塊の全数(=全産卵雌数)調査を実施した。

Royama (1981: Ecological Monographs 51, 473-493) は、年1世代の昆虫の個体群動態解析法として二次の密度依存過程を提案している。今、t世代目の卵塊数(=産卵雌数)をxtとし、Xt=log(xt)とすれば、

Rt=a+b1Xt+b2Xt-1 (R:増殖率 Rt=Xt+1-Xt

卵塊数が0個の年があったので、解析にはha当たりに換算した卵塊数+1の対数を使用した。

大発生がなかった潜伏発生期の9年間では、

Rt=1.761-0.435Xt-0.707Xt-1 (r2=0.712; P=0.083)

大発生期間を含む21年間では、

Rt=1.055+0.046Xt-0.498Xt-1 (r2=0.362; P=0.028)

潜伏発生期も大発生期も、ともに一次よりは時期遅れの二次の密度依存過程の影響が強かった。平衡密度を求めると、潜伏発生期では35個/haで、大発生期間では216個/haと意外と差が少なかった。発表者らは、第57回大会(2010年3月、東京)でも今回の資料の一部を発表したが統計ソフトSASへのデータの読み込みに間違いがあった。美唄と同時に大発生した、札幌市と勇払郡安平町の記録も合わせて発表する。


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