| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L1-12 (Oral presentation)

カメラトラップの撮影頻度は信頼すべき密度指標となりうるか?

中島啓裕(京大・理)

カメラトラップは、中・大型動物のモニタリングを効率的に行う簡便な調査手法として、世界中の多くの研究者に用いられるようになっている。しかし、カメラトラップは、種の在・不在について非常に信頼度の高いデータを提供することが確認されている一方、その撮影頻度が、動物のアバンダンスの指標となりうるのか、定まった見解はない。本研究では、アフリカの熱帯雨林に生息するブルーダイカー(Cephalophus monticola)とオジルビーダイカー(C. ogilby)を対象に、十分離れた5箇所の調査地で、ライントランセクト・センサスとカメラトラッピングを並行しておこない、推定密度と撮影頻度がどの程度相関するのか調べることにした。各調査地に2kmのライントランセクトを設営し、ラインセンサスを1年間に渡って行うとともに、トランセクト上に30台のカメラトラップを2ヶ月間設置した。さらに、必要な調査努力量を推定するために、変動係数(Coefficient of variation)を計算し、どの程度の期間、何台のカメラを設置すれば撮影頻度が安定するのか明らかにした。これらの結果、2種のダイカーで共に、推定密度と撮影頻度には非常に高い有意な相関が得られること、すなわち撮影頻度は、実際の動物のアバンダンスを強く反映していることが確認された。また、撮影頻度は、両種において、500から600 camera*day(カメラ台数×カメラ設置日数)で安定することが分かった。本結果は、比較的高い個体数密度を持ち、ほぼランダムにマイクロハビタットを利用する習性を持つダイカー2種から得られた結果であり、一般化することは出来ない。しかし、相対アバンダンス推定においても、カメラトラップが有効な調査手法になりうることを示唆していると言える。


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