| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-20 (Oral presentation)

温度上昇とCyclopoidが動物プランクトン群集に与える影響

*小林宏輝 花里孝幸 (信州大 山岳総研)

近年、地球温暖化生態系に与える影響に関する研究が数多く行われており、それに伴う水温上昇が動物プランクトン群集に与える影響の評価も行われるようになった。温度変化は動物プランクトン個体の生活史特性を変化させる。これに関しての研究はかなり進んでいるが、温度上昇が動物プランクトンの食う食われる関係にどのように影響するかは明確に研究されていない。そこで、本研究ではそれらを実験的に解析することを目的とし、無脊椎捕食者のケンミジンコ (Thermocyclops taihokuensis ) が植食性動物プランクトン群集に与える影響が温度によってどのように変化するかを、メソコスムを用いた実験で検証した。

動物プランクトン群集を構築するため、タンクに水道水と諏訪湖湖心で採取した底泥を加え(この中に動物プランクトンの休眠卵が含まれる)、動物プランクトン群集を発生させた。このタンクの動物プランクトン群集を用いて20℃-ケンミジンコ区、20℃-Control区(ケンミジンコなし)、24℃-ケンミジンコ区、24℃-Control区(ケンミジンコなし)の4つの処理区を20Lタンクでそれぞれ3個ずつ作った。2日ごとに鉛直カラムを用いて水面から底までサンプリングを行い、採取したサンプルから各タンクにおける動物プランクトン群集の個体群密度の変化を調べた。

ケンミジンコの存在は動物プランクトン群集のバイオマスを増加させる結果となった。また、この効果は24℃に比べ20℃の方がより強い傾向があった。今回の結果から、淡水域の温度上昇が進むと、動物プランクトン群集に及ぼすケンミジンコの影響が弱まることが示唆された。


日本生態学会