| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) M2-22 (Oral presentation)

高山湖沼におけるミジンコとケンミジンコの生存戦略の比較

*平野真聡 (信州大・院), 花里孝幸(信州大・山岳総研)

標高2000m以上に存在する高山湖沼は、年間を通じて水温が低く、冬季には結氷が観測される。その影響で長期間水中への日光照射が遮断され、水中の生産量低下が起こるなど、生き物にとってストレスとなる要因が数多く存在する。しかしながら、高山湖沼には多くの生き物が生息しており、中でも動物プランクトンは非常に高い個体群密度で存在していることが知られている。高山湖沼で一般的に見られる種は、Acanthodiaptomus pacificusDaphnia longispinaである場合が多いが、この2種は共に植食性であり、このような厳しい環境下での共存を可能にしている要因を探ることは、大変興味深い。

今回調査を行った白駒池は、標高2115mにあり、腐植栄養湖に分類される湖沼である。水温は低く、11月中旬から翌5月初旬までの長い結氷期間をもっている。動物プランクトン優占種は、A. pacificusD. longispinaであり、共に高い個体群密度を維持していることが知られている。本研究では、結氷環境下での動物プランクトンにも注目し、年間を通した動物プランクトンの採集を行い解析した。採集は各水深(1m間隔)で行い、固定した後、研究室にて種同定および体長や発育段階の測定を行なった。サンプリングは全て湖心で行い、pH・EC・水温・DO・Chl.a濃度の測定も行なった。

体長測定の結果から、2種の間で個体群増殖の最盛期や、世代交代の時期に差があることが明らかになった。A. pacificusは解氷直後に最盛期を迎え、結氷直前に世代交代を行っている一方、D. longispinaは解氷してから1ヶ月以上後に最盛期を迎え、その後断続的に世代交代を繰り返していた。また、それぞれの種が多く分布している水深にも差があることが分かった。このことから、この2種間の共存を可能にしている要因は時間的・空間的な住み分けによるものが大きいと考えられる。


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