| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-037J (Poster presentation)

上高地・槍穂地域に侵入したオオバコの分布と生育特性

*渡邉修,久野雄大(信大農)

上高地・槍穂地域では国内外から多くの観光客や登山者が訪れ,自然度の高いエリアまでオオバコが侵入している。オオバコの分布域を定量的に把握するため,GPSとジャイロセンサーを内蔵したカメラで発生地を特定し,達観調査による発生量を調査した。2011年度の分布調査は,上高地園内,徳沢―蝶ヶ岳―横尾登山道,徳沢―徳本峠登山道,田代橋―焼岳登山道,横尾―本谷橋―涸沢小屋登山道で行った。また,徳本峠登山道1,700m地点(集団A),徳本峠標高1,960m地点(集団B),標高1500mの明神(集団M),標高830mの信大農学部(集団S)において,2011年5月下旬から10月下旬の間,合計6回にわたって生育調査を実施し,葉数,葉面積,葉乾物重,穂数,最大穂長,穂乾物重,RGRを計測した。上高地園内全域でオオバコが確認された。徳本峠登山道,焼岳登山道において連続分布し,標高2000m付近まで高頻度で確認された。蝶ヶ岳登山道では分布は稀で,長塀山から蝶ヶ岳山頂にかけては分布が確認できなかった。横尾谷では本谷橋まで高頻度に発生がみられたが,本谷橋から涸沢ヒュッテまで分布は稀で,標高2350m付近が最高標高であった。分布の稀な登山道は,急登が長く続くエリアであり,一般の人が訪れる頻度ややや低いと考えられる。標高の異なる4集団のRGRを比較したところ,集団Bにおける5-6月のRGR値が最も高く,0.068g/g/dayを示した。一方,集団Mと集団Sは6―7月のRGRがマイナスを示し,団Aは8下旬,集団Bは9月下旬までRGRがプラスで,標高の異なる集団間で成長様式が大きく異なっていた。標高2000m近くの集団Bは個体当たりの葉重が最大0.3dwg程度で個体サイズが極めて小さい一方で,相対成長率は低標高の集団よりも高く,種子生産数は約200粒/個体を示し,生育期間の限られた亜高山帯で効率よく成長,繁殖できる特性を示していた。


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