| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-310J (Poster presentation)

ヒヌマイトトンボのミチゲーションプロジェクト.5.宮川浄化センターの保全プロジェクトと観察会.

*木村京子(三重県環境学習情報センター)・山路哲生(三重県・伊勢建設事務所)・東 敬義(三重県立図書館)・渡辺 守(筑波大・院・生命環境)

三重県では、生活排水や工場排水等の増加による河川や海域などの水質汚濁を解決するため、広域下水道の普及が急務となっていた。その一つとして、伊勢市大湊に面積約19haの下水処理場(宮川浄化センター)建設が計画されたのは、1995年である。その環境影響評価の調査において、対象地域内に絶滅危惧種ヒヌマイトトンボをはじめ、数種の貴重な動植物が確認された。三重県は、従来の環境影響評価の過程から一歩踏み出し、有識者からなるアドバイザー制度を作って、アドバイザーと県、コンサルタントの三者協議を進め、事後調査を継続し、貴重な動植物の保護・保全を図ることにした。ヒヌマイトトンボの場合、県の土木担当職員らにも調査に参加してもらい、本種の実物や、調査方法、解析方法などを学んでもらった。また、これらを理解し、生態学の基礎的知識を得てもらうために、アドバイザーによる「環境セミナー」を毎月1回開催し、よりよい環境保全対策づくりを目指したのである。このセミナーには、他機関の職員や地域住民、コンサルタント会社社員も参加可能とした。また、異動による担当者の交代にも対応できるよう、今もセミナーは継続中で、2011年までに、通算55回を数えた。近年では、毎回の参加者は20名ほどで、半数が県職員である。さらに、他機関の協力を得て、ヒヌマイトトンボの観察会なども毎年実施している。観察会の様子はNHK・TVや各種新聞により毎年取り上げられ、地域住民の関心も高まってきた。また、浄化センター供用後は、浄化センター見学に来訪する地元小学生にも絶滅危惧種の保全活動を説明するようになって、浄化センター自身が地域の環境保全活動の拠点となりつつある。なお、香港・台湾・国内各地におけるヒヌマイトトンボの保全活動と連携が取れるようになり、世界のヒヌマイトトンボ保全活動のネットワークの構築へと拡大しつつある。


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