| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-318J (Poster presentation)

コウノトリの採食生態 -水田における採食効率と餌生物密度の関係-

武田広子(東邦大・理・地理生態)

絶滅危惧種であるコウノトリ Ciconia boyciana は水田や河川浅水域などに生息する大型の水鳥で、生息環境の悪化などにより1971年に日本列島の野生個体群が絶滅した。日本最後の生息地である兵庫県豊岡市では、本種の保護・増殖のため1965年から人工飼育が行われ、2005年に本種の野生復帰を目的とした放鳥を開始、野外へのコウノトリの再導入(reintroduction)が始まった。2011年12月現在、放鳥・巣立ち個体をあわせて、47羽が野外で生息している。国際自然保護連合(IUCN)のSpecies Survival Commission’s Re-introduction Specialist Groupは、生物の再導入に関するガイドラインを示しており、計画継続の段階において、放野個体の生態学的、行動学的調査や個体および個体群の適応過程の研究が必要だとしている。

2005年からの本種の試験放鳥の成果を踏まえて、今後の本格的野生復帰を目指した短・中期計画と野生復帰の最終目標を提示した、コウノトリ野生復帰グランドデザインでは、野外個体群は2011年時点で給餌に依存しており、給餌からの段階的な脱却が短期目標として設定されている。そして目標達成のために、採食場所である水田や河川でのコウノトリからみた餌の得やすさを明らかにすることが必要としている。そこで本研究では、本種の主な採食環境の水田における、コウノトリの採食効率と餌生物密度について明らかにすることを目的とした。調査は、2010年6~7月に兵庫県豊岡市出石町袴狭・田多地地区の水田(約1.5km2)で行い、本区域を行動範囲とした放鳥個体を調査対象とした。これらの個体は、給餌に依存していない個体であった。調査は、1)水田(田面)における採食行動の追跡調査(野外における採食効率)、2)水田(田面)の餌生物密度調査を行った。


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