| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-242J (Poster presentation)

鳥類のペリットを用いた新規DNA解析法

*小林章弥(北大院・環境),外山雅大(北大院・環境),小泉逸郎(北大・創成)

DNA解析技術の進歩は、個体群構造や系統関係の推定など生態学の様々な分野の発展に貢献している。とりわけ希少生物種の保全においては、個体群の現状を把握し適切な保護管理計画を立てる上で重要な役割を担っている。対象生物への影響を最小限にするため、捕獲を伴わないサンプル収集法(非侵襲的サンプリング)が次々と考案されている。例えば、哺乳類では糞を用いた解析法が有効に活用されている。他方、鳥類では糞から得られるDNA抽出液の濃度が低く、解析は困難である。そのため、採取時に捕獲を伴う血液採集や、採取効率の低い羽の解析が広く用いられているのが現状である。そこで、我々は鳥類が吐き出す未消化物(餌種の骨や毛)の塊(ペリット)に着目し、新規DNA解析法の開発に着手した。ペリットには吐き出した鳥類自身の組織(内臓上皮や口腔内)が含まれ、DNA抽出が可能と予測される。特に猛禽類やカモメ類では、営巣場所やねぐら付近でペリットを吐く習性があり、その場所の特定により捕獲を伴わずに効率的な収集が可能である。一方で、ペリットからのDNA抽出には、餌種のDNAのコンタミネーション、ペリット内の鳥類組織の偏り、時間経過に伴うDNA収量の低下などが危惧される。

本研究では飼育下の猛禽類13種を用いて、DNA解析におけるペリットの有用性を検討した。ミトコンドリアDNAの特異的なプライマーを用いることにより、ほぼ全ての種で目的の遺伝子領域の増幅に成功した。一方で、上手くDNAを抽出できないペリットも存在し、本解析には鮮度や抽出部位など複数の要因が影響する可能性が示唆された。また、飼育下だけでなく野外から得られたペリットからのDNA抽出にも成功した。今後、本解析法は希少猛禽類の生態調査に大きく貢献することが期待される。


日本生態学会