| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-352J (Poster presentation)

侵入初期の北海道カササギ個体群のマイクロサテライト多型解析

*森さやか (科博・分子生物),中原亨 (九大・理),長谷川理 (エコ・ネットワーク),早矢仕有子 (札幌大・法),江口和洋 (九大・理),西海功 (科博・動物)

カササギ Pica pica はカラス科の鳥類であり,ユーラシア大陸,北米大陸に広く分布している.日本では約400年前に韓国から移入されたと推定される個体群が,佐賀県南部,福岡県南部の狭い地域にのみ定着生息していた.1960年代以降,九州の個体群は急速に分布域を拡大し,現在では北部九州に広く分布している.1980年代に入ると,北海道の室蘭市や苫小牧市でも観察例が報告され始めた.近年は苫小牧市を中心に安定した個体群が定着,繁殖しており,急激な個体数増加,分布拡大傾向にある.北海道のカササギは,港に入港する貨物船で持ち込まれたという説や,大陸から自然に渡ってきたという説などがあるが,検証はされていない.

カササギは雑食性であり,ヨーロッパでは同所的に生息する小型鳥類の捕食者として知られている.カササギのような捕食性,雑食性鳥類の急激な個体数増加と分布拡大は,幅広い範囲の鳥類相,生態系,さらには,農作物などに大きな影響を与える可能性がある.外来種の防除を検討するには,侵入元を特定し,侵入個体群の生態的特性の把握と原産地との比較をする必要がある.そこで発表者らは,北海道個体群の由来を推定することや,個体群の趨勢と遺伝的特性との関係を明らかにすることを目的に,侵入後急速な増加傾向にある北海道,長年狭い分布域を維持していた九州,移入元の可能性がある韓国や極東ロシアを対象とした分子生態学的研究に着手した.これまでに北海道産9個体,九州産19個体,韓国産34個体の試料を入手した.本発表では,既存のマイクロサテライトDNAマーカー(6遺伝子座)を用いた解析結果を報告するとともに,今後の課題について議論する.


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