| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-045J (Poster presentation)

異なる土壌水分条件下におけるカバノキ属2種の光合成機能と個体成長応答

*田畑あずさ,小野清美,隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)

ダケカンバ(Betula ermanii)とシラカンバ(Betula platyphylla)は,温帯から亜寒帯地方に生育するカバノキ属の落葉広葉樹であり,湿潤な日本や年間降水量の少ないロシア極東といった異なる水分条件下の生育地に幅広く分布している。植物が様々な水分条件に適応し生育するためには,水分不足条件下での光合成速度の低下に対し形態的・生理的に応答することが必要不可欠である。ダケカンバでは,前年の乾燥処理によって翌年に展開する葉の光合成速度が低下せず,細長い根を生長させることが明らかになっている。同様にシラカンバでも,乾燥条件下において根系を発達させることが知られているが,水分条件変化に対する個体全体の応答は2種ともに十分に調査されていない。そこで本研究では,異なる土壌水分条件下で生育したダケカンバとシラカンバの苗木を用い,光合成機能や地上部・地下部への生長応答にどのような影響を与えるのかを調べた。

調査の結果,苗木の枯死率はダケカンバの灌水個体で12.2%,乾燥処理個体で70.7%,シラカンバの灌水個体で37.5%,乾燥個体で77.8%となり,2種ともに乾燥処理個体の方が高い枯死率となった。同様に飽和光下での最大光合成速度,一個体あたりの葉数,地上部の生長も,乾燥処理個体で減少した。根とシュートの重量比は,処理の影響を受けずほぼ一定の値であり,根長・根重比はダケカンバの乾燥処理個体で増加した。発表ではこれらの光合成機能応答や形態的変化の他に,光阻害を防ぐための過剰光エネルギー防御機構反応や葉寿命の調査結果を加えて,土壌水分条件変化に対する苗木の個体全体の応答について議論を行う予定である。


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