| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-055J (Poster presentation)

高山の低大気圧下に生育するイタドリの光合成の最適温度調節

*坂田剛(北里大・一般教), 中野隆志(YIES), 可知直毅(首都大・都市教養)

低大気圧下では大気中のCO2量が少なく、光合成のCO2固定反応は基質不足で抑制されている。また、低大気圧下ではCO2固定反応の競争阻害物質であるO2も同時に減少するため、光合成促進も発生する。このためにCO2不足による光合成抑制は一部が相殺され、低大気圧により光合成はある程度の減少を示す。そして、この減少の程度には、葉の中でのCO2の拡散のし易さ(gi)や葉の中で活性化しているCO2固定酵素ルビスコの量(E)が影響することが明らかになっている。

高山に生育する植物の光合成最適温度は一般に低い傾向があることが知られているが、この特徴をもたらす仕組みは未だ明らかになっていない。そこで、低大気圧下の光合成に影響を与えるgiEが高標高での光合成の最適温度調節に果たす役割を明らかにするため、標高100 mと2250 mに生育するイタドリを材料に光合成特性の比較を行った。

その結果、低標高のイタドリの場合、光合成は、20~30℃の範囲でほぼ一定で35℃から低下を始めていた。一方、高標高のイタドリの場合、30℃で光合成が低下を始めていた。giの大きさおよび、その温度依存性に、両個体群間の違いはなく、いずれも高温でgiが増加する傾向がみられた。Eにも温度上昇と共に増加する傾向が見られたが、低標高のイタドリでは35℃で、高標高のイタドリでは30℃で低下が生じており、両個体群間に見られた光合成の温度依存性の違いは、Eの温度依存性によって生じていることが示唆された。一方、ルビスコのCO2とO2への親和性の比、およびその温度依存性に両イタドリ間で違いは見られなかった。


日本生態学会