| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-083J (Poster presentation)

ヒガンバナ種子の発芽について(続報)

*瀬戸 良久,武市 早苗,中嶋 克行(たけいち醫學研究所)

前回、我々は神奈川県の県央部で自生するヒガンバナ群落のなかに極わずかであるが開花・種子形成するヒガンバナの存在を確認した。次いで採取した種子の発芽試験を行い, 発芽から出葉するまでの経過を観察し, 正常に発芽する能力を有している種子のあることを報告した。また, 種子の発芽試験を行う際に、播種時期まで低温状態で乾燥を避け貯蔵した結果, 発芽が確認できた。本調査では,さらに種子の発芽に関する基礎資料を得る目的で, 種子の採取地(県西部)を変えて, 前回と同様の条件で種子発芽試験を行い, 採取時及び播種時の種子重量の比と発芽との関連を調査すると共に, 両地域それぞれの種子の発芽から出葉するまでの一連の経過等についても合わせて比較・検討した。

【結果】

1)採取した種子の発芽数は, 県央部が50粒中13粒, 県西部は32粒中12粒であった。次に種子の採取時重量を調べたところ,両地域の種子とも160mg未満のものに発芽は認められず, 160mgを超える種子数と発芽数をそれぞれみてみると, 県央部と県西部でほぼ同数であった。

2)県西部で採取した種子の採取時及び播種時の種子重量の比と発芽の有無を調べたところ,重量比が75%未満の種子に発芽は認められなかった。一方, 75%以上を保った種子は20粒あり,その中の12粒に発芽を認めた。

3)発芽時期は県央部及び県西部の種子とも3月下旬から発芽が認められ, 種子発芽から小鱗茎形成までの経過に違いは認められなかった。  

4)小鱗茎形成後の新根の発根時期と出葉時期において県西部に若干の遅れがみられた以外, 種子発芽後の経過に大きな違いは認められなかった。

以上の結果から,採取時及び播種時の種子重量の比が75%以上のものでは, 発芽する種子の割合が高いことが示された。更に, 神奈川県内の採取地域の異なる種子であっても, 同一条件下におけるヒガンバナ種子の発芽及びその後の経過は同様であった。


日本生態学会