| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-103J (Poster presentation)

栗駒山におけるブナ自然林の20年間の動態(2)空間分布の変化

*原正利(千葉中央博),平吹喜彦(東北学院大・教養),竹原明秀(岩手大・人文社会),富田端樹(東京情報大),菅野洋(宮城環境保全研究所)

私たちは,宮城県栗駒山の成熟したブナ林(低木型林床)に設置した1ha調査区において1989年から2009年までの20年間に,胸高直径2cm以上の樹木個体を対象に計6回(1989,1993,1996,2000,2004,2009)モニタリング調査を継続してきた.前回の報告(2010,第57回大会)では,胸高断面積合計,幹密度,直径階分布等の変化から,この林分では20年間,樹木個体群全体が非平衡・同調的な変化を示し,多くの種の個体群が再生期には無く,過去の直近の再生期に発生した同齢的な個体群が,個体数を減少させつつ成長してきたことを明らかにした.今回は,この間,個体(幹)の死亡や補充,個体数や胸高断面積合計値が空間的にどのように変化してきたかについて報告する.小区画(10m×10m)ごとに個体数の増減を見ると,1989-1993年間では,個体数が増加した区画が59区画あり,全体(100区画)の過半を占めていたが,その後,単調に減少し,2004-2009年間では6区画でしか増加が認められなかった.すなわち幹密度の低下は林分全体で進行していた.一方,林分全体の胸高断面積合計は1989-2004年の間,増加し続けてきたが,2004-2009年間に初めて減少に転じた.また,種ごとに,20年間の死亡個体と補充個体の空間分布の重複をCδ指数により計算すると0.4~0.7程度の値を示す種が多く,両者は無関係に生じてきたと推定される.この林分では,20年間,多くの樹木個体群は空間的なパッチ構造を維持しつつ,成長に伴う密度減少を起こしてきたが,2004-2009年に多くのギャップが形成されたことに伴い,今後は再び,林分全体で再生個体が増加する可能性がある.


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