| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-199J (Poster presentation)

条虫がカワバタモロコの繁殖生態へ与える影響

*吉村元貴 滋賀県立大学環境科学部環境生態学科 , 鈴木規慈 千葉県環境生活部自然保護課 , 浦部美佐子 滋賀県立大学環境科学部環境生態学科

カワバタモロコHemigrammocypris rasborellaはコイ科ダニオ亜科カワバタモロコ属の日本固有の淡水魚であり、その生息が確認されている全ての府県でレッドデータブックに記載されている。滋賀県湖東地域のあるため池では、条虫の一種Neogryporhuynchus cheilancristrotusのmerocercoid幼生が肝すい臓に寄生しているカワバタモロコが多数見られる。本条虫に重度に感染された個体では肝すい臓の肥大によって腹部の膨満がみられる。このような病理的変化は本種の繁殖生態(繁殖行動・抱卵数・婚姻色)へ影響を及ぼし、個体群動態へも影響を及ぼす可能性がある。そこで本条虫がカワバタモロコの繁殖生態および個体群へ与える影響を明らかにすることを目的として、条虫の感染量の季節変化、および条虫の感染量とカワバタモロコの繁殖行動、抱卵数、婚姻色、肥満度、GSIとの関係を調査した。

本条虫のカワバタモロコへの感染量は冬期(12月・2月)に高く、夏期(6月・8月)に低い値であった。感染量は雌のカワバタモロコの方が雄に比べ高い値を示した。繁殖行動は(1)追尾、(2)腹部以外へのつつき、(3)腹部へのつつきの3項目について、個体毎の行動回数とその対象者を記録した。その結果、雄個体が雌個体へ行う追尾、および腹部以外へのつつきが感染量と負の相関を示した。その他の項目に関しては感染量との間に相関は見られなかった。雌個体ではGSIは感染量と負の相関を示したが、雄個体では相関を示さなかった。肥満度は雌雄いずれも感染量との間に相関が見られなかった。抱卵数は体長の影響を除外すると感染量と負の相関を示した。婚姻色は感染量と相関を示さなかった。これらの結果から、条虫の感染がカワバタモロコの繁殖生態、および個体群に与える影響の可能性について論じた。


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