| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-206J (Poster presentation)

三重県伊賀市の水田地帯における水生節足動物の群集構造

山田翔大,*鶴田哲也(大阪産大・人間環境)

中山間地域の水田地帯には、水田やため池、河川敷のタマリといったさまざまな止水域が存在し、それらは水生昆虫など多様な生物種の生息場所として重要な役割を果たしてきた。しかし、圃場整備が行われ農薬が多量に使用される近代農業の推進にともなって、水田地帯の生物多様性は低下している。水田地帯の生物多様性を保全するためには、それぞれの種がどのような環境を生息場所として利用しているのかを把握する必要がある。そこで本研究では、中山間地域の水田、ため池およびタマリにおいて、水生節足動物の群集構造を調査した。

三重県伊賀市の水田地帯の異なる環境の止水域(慣行水田、減農薬水田、無農薬水田、タマリおよびため池)において、2011年8月上旬から10月上旬にかけて調査を行った。タモ網を用いた水中すくい取り法により水生動物を採集し、種類および個体数を調べた。

一時的水域である水田には、カゲロウ目、コオイムシ、マルミズムシ、ミズメイガ亜科、イネミズゾウムシ、ゲンゴロウ類、ガムシ類および双翅目が多く出現した。このうち、マルミズムシ、ミズメイガ亜科およびガムシ類は、農薬の使用量の少ない水田で個体数が多くなる傾向が認められた。一方、ミズアブ属の幼虫は、農薬の使用量の多い水田で個体数が多くなる傾向が認められた。水田同様一時的水域であるタマリには、カゲロウ目、ミズカマキリ、ガムシ類および双翅目が多く出現した。タマリは河川増水による攪乱の影響を強く受けるため、経時的な群集構造の変化も大きかった。恒久的水域であるため池には、トビケラ目、カゲロウ目、コオイムシ、オオコオイムシ、マツモムシおよび双翅目の個体数が多かった。このように生息環境の違いを反映して特徴的な群集構造がみられることから、水田地帯の生物多様性を保全するためには、さまざまな止水域の環境を整備することが重要であると考えられる。


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