| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-218J (Poster presentation)

木津川におけるワンド類型と動物相

浦島健太,加藤智,*石田裕子(摂南大学理工学部),竹門康弘(京都大学防災研究所)

ワンドは止水性の水生生物の生息場所であり、また仔稚魚期の成育場所や洪水時の避難場所として河川の魚類に利用されている。ワンドには、洪水が起こると形態変化を起こしたり消失したりする存在が不安定なものと、安定的に存在しているものがある。ワンドの形成には土砂供給量や堆積の仕方などが関与していると考えられる。本調査地である木津川は、土砂量が多く砂州が形成されやすいため、ワンドが多く存在している。本研究では、ワンド内の地形の違いによって生息する生物や環境などに変化があるか比較するため、ワンド内を開口部と奥に分け、さらに岸際で植物などがなく土砂で形成されている地形を裸地、植物が生えている地形を植生、ワンドの中央部を沖とし、1地点で最大6類型とし調査を行った。

調査期間は夏と秋で、環境調査項目として水深、表面流速、水温、河床軟度、水質を測定した。生物調査は、水生生物を対象とし半定量調査を行った。環境調査の結果から、砂州頭にあり流速が大きく浅くて消失しやすいワンドと、砂州尻にあり深くて河床が軟らかいワンドに分類された。水生生物は、砂州頭ワンドで28種、砂州尻ワンドで29種、全ワンドで38種が確認された。オイカワは全ワンドで確認され優占種であった。特に、秋期において稚魚の中でも体サイズの大きい個体は砂州尻ワンドに生息していた。また、両ワンドにおいて奥の体サイズが小さいことから、ワンドの奥は、稚魚にとって重要なハビタットになっているのではないかと考えられた。砂州頭でのみ確認された生物には、キイロカワカゲロウやキブネタニガワカゲロウなど水の流れがある程度ある場所を好む種が確認された。砂州尻ワンドでのみ確認された生物は、チビミズムシや、ユスリカ類や、ヤンマ類のヤゴなど水の流れがあまりない場所を好む種が確認された。


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