| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-252J (Poster presentation)

インドネシア・パリヤン野生生物保護区およびワナガマ演習林における鳥類および昆虫類の種組成と多様性に関する調査:植林後6年間のモニタリング結果

*関崎悠一郎(インターリスク総研), 原口真, 藤野敬文(三井住友海上), Musyafa, Subeno(Gadjah Mada Univ.)

本発表では、違法伐採等で荒廃したインドネシアのカルスト地域における自然再生と、そこでの鳥類・昆虫類のモニタリング結果を報告する。

ジョグジャカルタ州グヌン・キドゥル県のパリヤン野生生物保護区では2004年から、違法伐採と不法耕作によって裸地化した360haの土地を自然再生することを目指し、多様な在来樹種を用いた植林事業を実施してきた。植栽による植生構造や種構成の変化が鳥類や昆虫類の多様性に与える影響をみるため、現地では2005年からモニタリングが継続されている。

モニタリングでは、測定手段、環境変化への感度、解釈の容易さの点から、遷移初期の森林生態系での変化を把握するための指標種として鳥・チョウ・アリを選定したほか、その他の昆虫類の種組成の変化も調べた。調査地は保護区域内およびその周辺植生(チーク林、農地、混作地)、近隣の成熟林のモデルとしたガジャマダ大学ワナガマ演習林である。今回の発表では、鳥類は2006年1月~2011年2月、昆虫類は2005年12月~2010年1月の種毎の定量データを用いて、季節ごとの出現頻度や個体群密度の変化、種構成の経年変化、多様度を比較した結果を報告する。

本プロジェクトの最終目標は、パリヤン保護区と同様の特徴を持つ地域に役立つ、乾燥地の生態系における再生モデルを作りあげることである。標準化した手法によって把握可能な情報が、野生生物の生息環境の質の向上を適切に表しているのか、地域内に植栽した種が再生産を継続できるのか、自然再生に採用している植栽方式が生物多様性を回復させるために最善のものなのか。これらに対する回答は、パリヤン保護区に限らず他の自然再生プロジェクトにおいても、生態系管理への将来方針を決定するのに役立つと期待される。


日本生態学会