| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-253J (Poster presentation)

熱帯林のREDD+における効果的な生物多様性モニタリング (1): 樹木群集組成を利用した新しい手法の検討

*今井伸夫,田中厚志,北山兼弘(京大院 農),Jupiri Titin(Sabah Forestry Department)

REDD+における森林の減少・劣化の回避努力は、炭素の排出量削減のみならず、生物多様性の保護にも寄与する。REDD+では、炭素について厳密な評価が求められているのに対して、生物多様性への効果については評価手法が確立されていない。生物多様性には炭素のような明確な単位が無いため、評価のための有効な生物指標が必要である。

リモートセンシングの地上調査と同時に比較的安価に調べられ、かつ森林の構造を直接反映する樹木群集は有力な候補である。しかし、①樹木群集のどの値(種数、群集組成など)が生物多様性指標として適当なのか分からない②同定が難しい、等の問題がある。そこで、樹木群集を用いた効果的なモニタリング手法の開発を目的に、①樹木群集の指標性評価②同定の負担軽減策の検討(同定する個体の下限直径を上げて(10→20cm)数を減らす、同定時の分類階級を上げる(種→属レベル))を行った。

ボルネオ島サバ州南部サプルット森林管理区において、半径20mの円形プロットを60個(原生林~裸地までの6劣化度クラス×10反復)設置し、直径10cm以上の樹木の樹種と直径を記録した。樹種数は、森林バイオマスの増加に対して一山型の関係(中規模攪乱仮説)を示した。一方、群集組成の指標(序列化分析のひとつNMDSから得られる各プロットの1軸値)は、バイオマスと高い正の相関関係を示した。森林の劣化とともに増える種群(先駆種)および減る種群(極相種)の両方の効果を取り込んでしまう「種数」よりも、森林劣化に対して線的な反応を示す「群集組成」の方が有効な指標であることが示された。また、同定の負担軽減策(下限直径20cm、属レベル同定)を行っても、通常調査(10cm、種レベル)と同様の結果を得ながら、大幅な同定省力化(調査本数は通常調査の約4割、同定用標本の採取個体数は約1/50)を達成できることが分かった。


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