| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-262J (Poster presentation)

高山のカラスの分布拡大は人間によって引き起こされているか? カラスのゴミ依存度の都市、山地、高山の比較

中村太士,山浦悠一,赤坂卓美,松林順,*野條正志(北大・農)

高山の生態系は外部から侵入してきた生物に対して脆弱であり、日本の多くの高山では植生の破壊や外来生物の繁殖・交雑などへの対策を講じている。特に高山の利用者による生態系の破壊(外来種の持ち込み・踏み荒らしなど)は大きな問題とされており、保護活動の一環として利用者への啓蒙を行っている場合も多い。

カラス類は高山帯にはあまり分布していないものとされ、これまで高山帯の環境を保全する上で問題視されることはなかったが、近年、日本アルプスにて行われた調査によりカラス類の高山帯での分布拡大が確認された。また聞き取り調査から、カラスが高山生態系へ悪影響を及ぼす可能性、さらにカラスの高山への誘引について登山者の出す生ごみが関与している可能性についても同時に指摘された。

本研究では、カラス類の高山帯への分布拡大が冒頭に述べた「利用者による高山生態系の破壊」のケースの一つになるのではないかと考え、これを検証するため大雪山の高山帯に生息するカラスの羽の同位体比分析を行い、カラスのごみ依存度を調査した。

都市のカラス類は供給される生ごみを餌資源とすることで人間に依存し、その行動に影響を受けている。もし高山のカラス類の生ごみへの依存度が都市と同程度に高ければ、高山のカラス類が利用者の影響を受けている可能性はより高まるだろう。

調査対象地は北海道大学構内及び近郊(都市)・野幌森林公園(森林)・大雪山国立公園の高山帯の3ヶ所とした。各調査対象地を踏査することでカラスの羽およびカラスの食物資源を採取し、それぞれの炭素・窒素の安定同位体比を測定した。


日本生態学会