| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-267J (Poster presentation)

ワイルドライフ・ツーリズムにおける野生動物と人の関係ーマレーシアのエンダウロンピン国立公園を事例にー

*相原百合(首都大・観光),沼田真也(首都大・観光),Mazlan Hashim(UTM)

ワイルドライフ・ツーリズムは野生生物を観光資源とするツーリズムの一形態である。適切なワイルドライフ・ツーリズムは野生動物の保全と地域社会の持続的な発展に寄与する可能性があるが、観光客による野生生物の行動への影響など、観光が野生生物に及ぼす悪影響も懸念されている。本研究はワイルドライフ・ツーリズムを持続的に行うための条件を検討するため、公園内に生育する野生生物、観光客、先住民との関係を分析し、エンダウロンピン国立公園で野生動物がどのように観光のアトラクションとなるかを考察した。本研究は半島マレーシア南部に位置するエンダウロンピン国立公園で行った。今までに全95種類の哺乳動物が確認されており、トラやマレーバクなどの絶滅危惧種も生息する。第一に、観光客が観察可能な野生生物を明らかにするため、カメラトラップ調査、痕跡調査及びオランアスリ(先住民族)にインタビュー調査を行った。第二に、観光客が滞在中に見た動物や動物に対する期待を明らかにするため、滞在中の観光客に対してアンケート調査を行った。その結果、カメラトラップ調査により公園内の散策路では9種の哺乳動物の生息が確認され、痕跡調査から5種の大型哺乳動物の足跡が見つかった。一方で、観光客に対するアンケート結果から、観光客はゾウやトラなどの絶滅危惧種や珍しい動物を見たいと考えていたものの、滞在中に観察できた動物はサルとイノシシのみであった。以上から、複数の哺乳類が公園内で見られる可能性があるが、実際に観光客が観察できた動物は大型の昼行性哺乳類のみであったことが明らかになった。ワイルドライフ・ツーリズムにおける観光客の満足度を高めるためには、大型哺乳類の足跡などを観光資源として活用することが重要であると考えられる。


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