| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-310J (Poster presentation)

Biome-BGCモデルを用いた中国河南省の退耕還林トチュウ人工林における炭素循環のシミュレーション

*宮内達也,町村尚,福島龍太郎,中澤慶久,佐田忠行(大阪大学)

中国では水土保全や炭素固定のために環境植林が広く行われており、環境植林推進のために退耕還林政策を実施している。そのため炭素循環のシミュレーションは現地観測データの補完や退耕還林人工林における炭素固定量の将来予測に有効である。本研究は生態系プロセスモデルを用いて中国河南省の退耕還林人工林における炭素循環をシミュレーションすることを目的とした。

Biome-BGCモデルを用いて炭素循環シミュレーションを行った。研究対象地は中国河南省霊宝市の退耕還林トチュウ人工林とした。退耕還林前(トウモロコシ圃場)の土壌状態のスピンアップ計算ではトウモロコシの収穫を考慮するためにBiome-BGCの枯死ルーチンを改良した。また、有機肥料(CとN)の施肥も考慮した。現地観測で得た地上部(幹+枝)、根、葉の炭素量とシミュレーション結果を比較しながら炭素アロケーションパラメータをチューニングした。植物機能タイプはスピンアップ計算ではC4草原、植林後は落葉広葉樹とした。気象データは霊宝市南東40㎞に位置する盧氏のデータを用いた。シミュレーション期間は30年間で行った。

モデルの改良により有機肥料の施肥とトウモロコシ収穫を考慮することでスピンアップ計算精度を向上させた。研究対象地は半乾燥帯であるため植林初期は根への成長配分が大きいと考えられる。そのため植林初期(樹齢1-7年)の根への炭素アロケーションをデフォルト値より増加させ、樹齢7年以降はデフォルト値に戻すことで植物各器官の炭素量の実測値をうまく再現できた。植林初期の土壌炭素量は土壌中の有機物の分解により減少した。その後リターが増加し土壌の炭素プールへ移動するため増加する。バイオマスの植林後30年間の平均炭素固定速度は初期土壌炭素量による変化が小さく約3.7kgC m-2 y-1であった。


日本生態学会