| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-329J (Poster presentation)

ナマズが餌を襲う時 釣りを通して生態や環境を知る試み

今村彰生 (大阪市立自然史博物館)

登録1255 ナマズが餌を襲う時− 釣りを通して生態や環境を知る試み −

ナマズは、琵琶湖淀川水系における在来の上位捕食者である。強い魚食性を示すナマズが、どのような条件下で餌動物を追尾し捕食するのか、ルアー釣りを用いて調査し、昨年のESJ58において報告した。それによれば、ナマズでは風が吹いて水面が荒れることが餌追尾・好釣果に繋がる傾向が示された。ESJ59では、GLMをもちいた多変量解析のデータ数とパラメータ数を増やして再解析した結果を報告する。

さらにこの結果を用いて、琵琶湖に流入する河川・水路におけるナマズの生息状況を、釣りによって簡便に調査することを試みた。琵琶湖魚類の先行調査は、流入河川や水路についても多数が挙げられるが、いずれも多人数での入り込みや網を用いた調査である。そこで小規模でも魚の生息状況を調査する可能性を模索することが狙いである。

これらを踏まえ、簡便な調査法を模索するために調査地を琵琶湖へ流入する河口部に絞った。約400(うち一級河川118)とされる琵琶湖の全河川・水路のうち、今回調査した河川・水路は、約70箇所である。これらの調査地で、釣りに加えて、ナマズ、コイ科在来魚、サンフィッシュ科外来魚について目視による在・不在の調査を行った。

その結果、外来魚が40箇所以上で記録されたのに対し、ナマズが9箇所、コイ科在来魚が18箇所で記録されたにすぎなかった。とくに、琵琶湖大橋以南の「南湖」といわれる人口稠密地域に着目すると、ナマズの目視は4箇所(うち捕獲は2箇所)に限られ、一方でサンフィッシュ科外来魚は南湖の全ての地点で記録された。

これらの結果と、河川の環境条件(護岸と底の形状、抽水植物、浮草、河畔木の有無、水位など)との魚類の生息状況との関係について解析結果を報告し、それをもとに議論を深めたい。


日本生態学会