| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S09-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

これからの環境政策における生物多様性評価地図の活用

奥田直久(環境省自然環境局)

生物多様性評価地図は、昨年度公表した生物多様性総合評価を踏まえ、我が国の生物多様性の状態を空間的に把握することにより、生物多様性保全施策への幅広い応用が可能な基礎資料として環境省が作成したものである。本年9月を目処に行う生物多様性国家戦略の改定においても、国土の生物多様性の状況を把握し、今後目指すべき国土の姿を描いていくための資料として活用していくこととしている。

また、地方公共団体においても、国土全体からみた各地域の特性を把握し、地域の課題に即した生物多様性地域戦略の策定等に活用していくことが期待される。ただし、地域レベルではより詳細なデータを有する地域もあり、今後はこうしたデータを活用し、地域版の生物多様性評価地図を大学・博物館等の参画を得るなどして地域主導のプロセスで作成していくことが望まれる。

一方、昨年度公表した生物多様性総合評価及び今回の生物多様性評価地図の作成では今後の課題も明らかとなった。生物多様性総合評価及び生物多様性評価地図の作成にあたっては、国土全体を網羅的、継続的に調査したデータが不可欠であるが、生物やその基盤環境に直接関係するデータが少なく、更新もされていないものが多いため、地域間や時系列での比較・評価が難しい。このため、今後の定期的な更新を視野にいれた効率的なデータ収集の仕組みについて考えていくことが不可欠である。また、国土交通省や農林水産省などの環境省以外の国の行政機関が所有するデータの相互利用や、地方公共団体が管理するデータ等との共有を図り、生物多様性に関するデータベースの統合を図っていくことも必要である。

今後、評価に用いるデータや手法をさらに発展させ、全国レベルの広域的な視点で優先的に保全・再生を図っていくべき地域の抽出、生態系ネットワークの形成、広域的な野生鳥獣の管理など、具体的な保全活動等の実施につなげていきたい。


日本生態学会