| 要旨トップ | ESJ59 企画集会 一覧 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T01 -- 3月18日 17:30-19:30 A会場

地下生態系をまるごと解き明かす: ネットワーク理論・物質循環・ゲノム情報を統合した新戦略を立ち上げる

企画者: 東樹宏和

生態学の最後のフロンティアはどこか?

抱えている種多様性の桁さえ知られず、生物間相互作用にいたってはほとんど観察することができない領域。そう、それは私たちの足下に拡がる土壌生態系である。

生態学の未知領域である土壌生態系は、食料生産の面でも、地球環境の恒常性に関する面でも、私たちの未来に大きな影響を与える。2050年までに世界人口は90億人に達すると言われるが、現在においてさえ、世界は9億人以上の飢餓人口を抱えている。熱帯林の伐採と土壌の乾燥化により大量の温室効果ガスが大気中へと放出され、地球レベルでの炭素収支が崩れ始めている。こうした人類が直面する問題に対して、作物の遺伝的改変を通じた科学の貢献が多くの国で求められている。

しかし、個々の植物種の遺伝的改変だけで、多元的な問題を根本的に解決できるだろうか? 農業生態系や森林生態系をひとつのシステムとして捉えることで、多様性を活かした生態学的な解決法が存在するのではないだろうか? 種多様性と群集の安定性、食物網や相利共生ネットワークの構造、さらに生物群集の成立過程に関わる生態学の理論は、適切な実証研究と刺激し合うことで、広範な応用分野に貢献するのではないだろうか?

本集会では、「環境・農業科学の新たな礎を築く上で、生態学こそ中軸となり得る」という可能性について、最新の研究成果を紹介しながら考える。群集生態学、進化生物学、理論生態学、物質循環、バイオインフォマティクス、生理生態学をまたいだ研究者ネットワークの中で、演者らは新たな模索を始めた。異分野の融合は何をもたらすのか、さらなる飛躍のためには何が必要なのか、議論したい。

[T01-1] 趣旨説明: 環境科学の中軸として求められる生態学とは? 東樹宏和(京大・次世代)

[T01-2] ゲノム情報で見えてくる地下生態系:菌根菌の群集構造を解き明かす 山本哲史(京大・理)

[T01-3] 物質循環シミュレーションモデルにおける土壌生態系: 新たなフロンティアとその課題 伊勢武史(兵庫県大・シミュレーション)

[T01-4] 分野横断プロジェクトでブラックボックスに挑む: 空前の規模のネットワーク情報は生態学に何をもたらすか? 東樹宏和(京大・次世代)

[T01-5] 相互作用ネットワークとしての生物群集理解: 展望と限界 近藤倫生(龍谷大・理工)


日本生態学会