| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T05-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

攪乱とレジリアンスの視点から見た機能的多様性の意義

谷内茂雄(京大・生態研)

最初に、長い時間スケールにおいて、機能的多様性と生態系の状態がニッチ構築(niche construction)の関係を通じて群集形成をおこなう概念モデルを提案する。生態系を構成する機能群(機能的多様性)と生態系のマクロな状態との関係は、植生遷移に見られるように密接な相互依存関係にあり、固定したものではない。特に長い時間スケールを考えた場合には、両者は相互依存する形で変化すると捉えるのが自然であろう。この描像の下で、撹乱が生態系に与える影響を規定し、撹乱後に生態系が回復あるいは再生する上でのレジリアンス(resilience)を検討する。レジリアンスとは、生態系が困難に際して、いわば「打ち負かされない」ための能力といってもよい。撹乱によって生態系が大きなダメージを受けた場合、その再生には特定の機能群が不可欠となる。その場合、レジリアンスの大きさは、必要となる機能群が容易に供給されるかどうかに、つまり撹乱直前にその生態系があった遷移段階と分散や空間構造が関わる機能的多様性の維持・供給機構の2つに依存するだろう。講演では、このような枠組みの下で、機能的多様性と機能的冗長性に関する理論的な課題を整理して紹介する。


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