| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T07-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

琵琶湖湖岸の砂浜植生の類型

村上雄秀(IGES国際生態学セ)

琵琶湖湖岸の砂浜植生については佐々木(1996)の報告があり,その後断片的に村上・西川(2009),村上(2010)で記載されている.講演では2007~2010年の現地調査結果を総括的に報告する.湖岸の砂浜は水泳やボート,キャンピングなどの観光的な利用や年2回の定期的な除草,さらに養浜施工により湿地植生と較べ強い人為的な撹乱が及んでいる.認められた主な植生類型は以下の通り.

・春季1年草群落(シロザクラス;ハルタデ-シロザオーダー):ハナヌカススキ-ナギナタガヤ群落,タチスズシロソウ-スミレ群落,ナガミヒナゲシ群落

・夏季1年草群落(シロザクラス;ツユクサオーダー):ノゲイトウ群集,アレチウリ群落,ヤハズソウ-カワラケツメイ群落,ハタガヤ群落,オオフタバムグラ群落,ニワホコリ-コスズメガヤ群落

・春季多年草群落(セイヨウオオバコクラス;カモジグサ-ギシギシ群団):カラシナ群落,ハマダイコン群集,カラスムギ-ヒゲナガスズメノチャヒキ群落,ナガバギシギシ-ギシギシ群集,シャクチリソバ群落

・多年草草原(ハマボウフウクラスほか):アメリカネナシカズラ-ハマヒルガオ群落,ハマスゲ-ギョウギシバ群落,クロカワズスゲ群落,ハマエンドウ群落,チガヤ群落,カワラサイコ-カワラヨモギ群集,シナダレスズメガヤ群落,メリケンカルカヤ群落,カゼクサ-オオバコ群集,ノハラカゼクサ群落

群落体系上の知見としては以下の点が指摘される.

・既存の群落体系(宮脇ほか 1994)では,湿地以外の1年草草原としては畑雑草群落であるシロザクラスのみが記載されている.自然立地に生育するタチスズシロソウ-スミレ群落(春季),ハタガヤ群落(夏季)などの在来1年草からなる群落の体系上の位置づけが急務である.

・湖岸前縁で顕著なハマダイコン群集,カラシナ群落などの春季1年草の優占群落では多年草の混入が顕著であり,海浜のハマダイコン群集と同様にカモジグサ-ギシギシ群団へ帰属された.


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