| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T09-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

照葉樹二次林に隣接する伐採跡地における6年間の種子散布

山川博美(森林総研・九州),伊藤 哲,中尾登志雄(宮崎大・農)

森林管理において、生態系としての森林の健全性と生産力の維持や生物多様性保全を実現するための生態系管理の視点が重要視されている。日本の森林面積の約4割はスギやヒノキなどの針葉樹の単純一斉林であり、生物多様性の低下が指摘されている。そのため、生態系・ランドスケープレベルで自然環境を保全する上で人工林の存在を無視することはできず、森林景観全体で生態系サービスを回復させていく上では、部分的に天然生林へ転換すべき林地が存在する。伐採後の森林再生は、前生樹、埋土種子および伐採後に新たに散布される種子(新規散布種子)によって始まる。そのなかで、新規散布種子は多様性の回復などにおいて重要な更新の材料である。本研究では、伐採後の新規散布種子に着目し、残存する照葉樹林が伐採後の森林再生に及ぼす影響を解析する。

調査地は、宮崎県宮崎市に位置する宮崎大学田野演習林内の照葉樹二次林および隣接するスギ人工林の伐採跡地である。スギ人工林は、2005年5月に伐採され、伐採後の7月から2011年6月までの6年間、シードトラップによる種子散布の観察を行った。シードトラップは、試験地内に58個設置し、2ヶ月に1回の頻度で回収した。

伐採地に散布された種子は、隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林と比較して著しく少なかった。また、種子は伐採1年目にはほとんど観察されず、伐採2年目以降から増加する傾向にあり、4~5年生時点から伐採地内にも種子の散布が確認されるようになった。これらの結果に基づき、種子散布者との関係および種子生産の豊凶との関係を踏まえ、種子の供給源となる残存する照葉樹林の森林再生への役割および林縁効果の範囲について議論する。


日本生態学会