| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T12-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

都市生態系を規定する社会経済的要因:樹林地管理を事例に

*土屋一彬(和歌山大・環境)

近年、社会経済的要因は都市生態系を規定する主要な要因として注目されており、その理解が都市生態系の適切な管理へとつながることが期待されている。こうした社会経済的要因としては、人間が生態系に直接的に働きかける行為や、そうした行為をコントロールしている社会制度が想定されている。なかでも都市に特徴的な要因としては、前者の例として、住宅地や道路網の建設による生態系の分断化や、公園管理などに伴う植生への(強度の)撹乱などが、後者の例として、都市計画による土地利用の誘導や、保護地区の設定による生態系の維持などが言及されている。これらの社会経済的要因と生態系との関係を理解し、管理や制度設計に応用することによって、人間にとって望ましい生態系サービスを維持・増進していくことが可能となる。

しかし、多様な社会経済的要因や要因間の相互関係については、その複雑さゆえに一部のみが取り上げられることが多く、また社会科学と生態学との乖離から、都市における社会経済的要因と生態的要因が有効に結びつけられずに議論されることが多かった。さらに、都市生態系の議論では、都市化の進行に伴う生態系の喪失・分断化の影響の緩和に主に焦点が置かれており、都市化が進行した後に残存する生態系の管理の問題については、これまで十分に議論されてこなかった。本発表では、都市に残存する樹林地の管理に関する実証例を交えながら、都市生態系に影響する主要な社会経済的要因や、多様な社会経済的要因のとり扱い方を解説し、今後都市生態学が管理に寄与していくために解明されるべき課題を整理したい。


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