| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T15-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

木材腐朽菌と菌食性甲虫のネットワーク

山下 聡(森林総研)

木材腐朽菌類の一部である多孔菌類は,サルノコシカケ型といわれる硬質で長命な子実体を枯死木上に形成し,多様な甲虫によって利用されている。利用方法は甲虫によって異なるが,多くの菌食性甲虫は成虫が子実体を訪問し,そこで摂食や産卵等を行う。甲虫群集の構成は菌の種類によって異なり,また,子実体の発達に従って遷移する。ところで,森林において子実体はパッチ状に存在しており,成虫が子実体間を移動分散する。そこで,ある森林における菌食性甲虫群集は個々の子実体に形成された局所群集のネットワークとみなすことができる。しかしながら,菌食性甲虫群集を対象として食物網構造,メタ群集のいずれの視点からも行われた研究はほとんどない。本研究では,多孔菌と甲虫の食物網構造を明らかにするために,甲虫群集の寄主利用様式を調べた。同時に,局所群集の形成における子実体の種類や発達段階などの相対的重要性を評価した。

調査は,東南アジア熱帯林に位置するランビルヒルズ国立公園において,3haプロットを設置して2008年に約3週間の調査を行った。採集された24属433個の子実体のうち,15属111個から15科91種842個体の甲虫を得た.甲虫群集は少数の広食者と多数の狭食者から構成され,多様な種がGanoderma属で認められた。CCAとpCCAを用いた種構成のばらつきの分割を解析した結果,局所群集の形成過程において,環境要因(子実体の種類など)と空間分布の両方が有意に影響していることが示された。これらのことから,菌食性甲虫群集は,種選別パラダイムと集団効果パラダイムで説明される群集形成機構の両方が働いているメタ群集であると考えられた。講演では,枯死材から菌食性甲虫までの生態ネットワークについて,本研究の結果をふまえて考察したい。


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