| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T20-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

山岳生態系における植生変動の定量化-景観スケールからのアプローチ

*谷内秀久, 星野仏方, 金子正美, 矢吹哲夫, 加藤勲, 飯野久江, 山畑順(酪農大), 雨谷教弘, 工藤岳(北大)

近年、地球温暖化などの影響で、直接人為的影響を受けない北海道大雪山岳に分布する高山植物に異変が生じている。多くの高山植物が消失し、代わりにチシマザサが侵入し分布域を拡大している。本研究は、大雪山五色ヶ原の植生変動の定量化のために、植生判別と植生変動地域の地表面特性の抽出を行った。植生判別は、1977年と2009年の航空写真を用いて、五色ヶ原を中心とした地域で500m×500mの合計50万㎡とした範囲内で目視判別によってササ、ハイマツと高山植物の分類を行った。また、より広範囲で地物のスペクトル情報をもとにした画像分類 (ENVI EX4.8を用いた教師付き分類)を行った。植生変動地域における地表面特性の解析は、ALOS衛星PALSARのL-バンドマイクロ波の多偏波(HH/HV)データを用いて、後方散乱係数(σ0)を計算し、五色ヶ原調査地おける土壌水分と実測値の間の相関関係を明らかにした。後方散乱の算出をもとに、五色ヶ原調査地全域の土壌水分の季節変動を求め、また、ササ密集地、ササ前線及び高山植物でplot1,2,3を設置し、後方散乱の季節変化をそれぞれ求めた。他に、0.5m空間解像度の数値表層モデル(DSM)を用いて、傾斜度、斜面方位、及び影を抽出し、これらの指標を用いて植生変動の要因の解析を行った。結果として、1977年から2009までの32年間にササの分布面積は目視分類では25.9%、スペクトル分類では、17.8%増加していたことがわかった。また、ササは、斜面方位が北東~南東向き、傾斜度が0-20度の日当たりのよい場所へ拡大の傾向を示した。後方散乱の算出の結果、五色ヶ原全体では、6月中旬~7月上旬にかけて、雪解け水の影響を受け土壌水分の増加の傾向が見られ、8月の上旬~下旬及び9月~10月にかけて、ササによる蒸発散の影響で土壌水分の減少の傾向が見られた。


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