| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-01 (Oral presentation)

阿武隈山地北部の高放射線量地帯の野生動物モニタリング

石田健(東京大・農生命)

福島第一原発事故により高線量地帯となっている、原発から北西方向約10 ~ 40kmの20km四方の地域において、2011年7月~2012年12月に13回現地調査し、ガラスバッヂによる放射線量測定、鳥類スポットセンサスと録音機による動物モニタリング、ウグイスの捕獲調査等を実施した。ガラスバッヂでは、異なる予測線量当量の地点、微環境に約2ヶ月間設置後、70cm線量当量 (mSv)として定量された。鳥類スポットセンサスは、 2011年7月(3分間)、8月、2012年5月と6月(以上5分間)の日の早朝を主とし、姿と声で確認した種と個体数を記録した。録音は、2011年7月~8月は6地点、2012年2月~8月は12 ~ 6地点にモノラルマイクを出し防水ケースに納めたICレコーダを設置し、日の出前後などにタイマー設定し連続録音した。2012年6月に18地点、7月に7地点に防滴ケースで保護したステレオ録音のICレコーダを設置し、晴天の日の出前後のタイマー録音を行い、線量の異なる多地点の可能な限り揃った条件での鳥類モニタリングを試みた。バッヂにより地上約1mと地際(~10cm)で測定したγ線量当量は、文科省・大阪大学等の発表している周辺の線量分布に該当した。スポットセンサスにより45種の鳥類を記録し、最も出現頻度が高かったのはウグイスだった。文科省等による線量当量の分布、区分に対応して集計した範囲では、空中放射線量とウグイスやヒヨドリ等の出現頻度が対応する傾向はみられなかった。録音によるモニタリングデータによって、2012年は3月10日前後から、ウグイスのさえずりが確認された。録音データは、分析途上にあり、可能性についてのみ論じる。2011年8月中旬に換羽中のウグイスの雄4個体、10月に雌1個体、2011年7月と8月にウグイスを9個体捕獲した。換羽前の羽毛によって、個体の被曝量が推定できる可能性がある。


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