| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-10 (Oral presentation)

生物間相互作用を考慮した魚類群集の資源管理モデリング

*黒田啓行(水研セ・西海区水研), McAllister, M. (UBC), Parkinson, E., Johnston, T., Askey, P. (BC Ministry of Environment)

漁業や遊漁(釣り)に関する資源評価は、単一魚種を対象に行われる場合が多い。被食-捕食関係などの種間相互作用を考慮した資源評価モデルの開発も進んでいるが、相互作用を定量化するデータや知見の不足などにより、現実の資源管理に積極的に生かされているとは言いがたい。

本研究の対象であるカナダ西部のクーニー湖は大型のニジマスが釣れることで有名で、遊漁は地域の重要な産業である。ところが、周辺流域におけるダム建設などにより、大型ニジマスの餌であるヒメマスの資源量が低下したため、湖への栄養塩添加やヒメマスの産卵場整備、ニジマスの遊漁管理などが20年近く実施されている。しかし、これらの管理施策は経験的かつ同時的に行われているため、各施策の効果を定量的に評価することは難しかった。一方、様々な調査が毎年実施され、産卵場の親魚数など個体群動態に関する長期データが利用可能である。そこで、ヒメマス-ニジマス系の資源管理を対象に、被食-捕食関係を明示的に取り入れた資源評価モデルを構築し、各管理施策の効果を定量的に評価することとした。資源評価モデルでは、両種の年齢別個体数と体サイズの時間的変化をモデル化し、生活史や遊漁活動に関するパラメーター値は過去の時系列データから推定した。

解析の結果、現在の管理施策はニジマスの遊漁を今後も概ね持続できそうなものであることが明らかになった。しかし、管理に対する有効性や役割は施策間で異なることも判明した。さらに、大型ニジマスの資源量を現状以上に増加させるためには、ニジマスの産卵場整備など新たな施策の必要性も示唆された。


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