| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-04 (Oral presentation)

アミノ酸窒素同位体比を用いた、陸域分解系における土壌動物の資源利用解析

*陀安一郎, 長谷川尚志, 由水千景(京大・生態研セ), 力石嘉人, 小川奈々子, 大河内直彦(JAMSTEC)

陸上生態系で生産された有機物のうち、生食連鎖で動物に利用される以外の大部分は腐植分解プロセスを経て土壌有機物として蓄積される。土壌圏に生息する動物は、枯死したばかりのリターから、分解プロセスの中間段階の有機物、また土壌そのものを利用することで生存している。一方、土壌動物の餌となる資源は目視することが難しいため、何らかの指標を用いて特定することが必要となる。いままで、炭素・窒素安定同位体比や放射性炭素14などの手法を用いて研究が行われてきたが、本研究では近年利用が広がっているアミノ酸窒素安定同位体比(特にフェニルアラニンとグルタミン酸)を用いて解析を行なった。

アフリカ及びアジア熱帯のC3植物からなる森林及びC4植物からなる草原で採取された、食性の異なるシロアリとミミズを測定した。その結果、バルク窒素同位体比の大きく異なる分解初期利用種と分解後期利用種でアミノ酸間の窒素同位体比の差はほとんどなかった。これは、腐植食性の土壌動物に特有のパターンかもしれない。また、キノコと共生するキノコシロアリについて測定したところ、餌となる植物リターからキノコへの変換パターンは、グルタミン酸の窒素同位体比の上昇を伴わないものであった。いずれにせよ、陸域分解系における土壌動物の資源利用解析に新たな可能性を示すものであった。

本発表では、温帯森林で採取された中型土壌動物の分析結果を加え、アミノ酸窒素安定同位体比を用いた今後の土壌生態系解析手法について検討を加える。


日本生態学会