| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-05 (Oral presentation)

シロアリ3種の雑種コロニーにおける共生原生生物群集の変化

北出 理, 來栖 嘉宏(茨城大・理)

シロアリ類の後腸内には共生原生生物の群集が存在し、その種組成はシロアリの種に特異的である。日本のヤマトシロアリ属の種では、10-13種の原生生物が確認されている。これまでの研究で、ヤマトシロアリとカンモンシロアリの有翅生殖虫(王・女王)を人為的にペアにして巣を創設させると、交配して雑種コロニーをつくり、子供であるワーカーに両親から原生生物が伝達されることが分かった。さらに、ワーカーは初め両親種に特異的な種を併せ持つが、時間経過とともにヤマトシロアリが本来もつ組成へ変化した。共生原生生物の群集組成に安定的な種の組合せが存在することが示唆される。

本研究では、ヤマトシロアリ、カンモンシロアリ、アマミシロアリの3種を用いて3通りの雑種コロニーと3通りの同種コロニーを創設させ、原生生物組成の変化を調査して先の現象の一般性を検証した。創設後80、160、230日後に、1コロニーあたり5個体のワーカーを調べ、各種原生生物の有無を検査した。各コロニーの組成の類似性は対応分析で評価した。

ヤマトとカンモンの同種コロニーは、野外コロニーと同じ組成のままほぼ組成の変化がなかった。これに対し、ヤマト×カンモン、ヤマト×アマミの雑種コロニーでは、創設後、ヤマトの野外コロニーの組成に次第に収束していった。アマミの同種コロニーでは、創設後80日の時点で本来持っていた原生生物1種が失われており、その後その組成から変化しなかった。カンモン×アマミの雑種コロニーでは、初めコロニー間で組成のばらつきがとくに大きかったが、230日後にはアマミの同種コロニーもしくはカンモンの野外コロニーの組成に近づいた。さらに創設700日後の種組成と群集構造のデータをあわせ、大規模な群集の混合を経た後の共生微生物群集の挙動と組成の決定要因について議論する。


日本生態学会