| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-06 (Oral presentation)

植生二次遷移過程における、クモ群集及びエサ供給量の変化と同位体食物網の関係

*原口岳, 陀安一郎 (京大生態研)

クモ類は植物体上で優占する捕食者である一方で、植物体外から相当量のエサの供給を受けている。先行研究から、低木層上のクモが、双翅目などの土壌から羽化した昆虫を捕食しており、このようなエサが腐食連鎖由来の資源供給となっていることが示されている。水生昆虫の増大に対して水平円網を作るクモが特に増加する例のように、特定のエサ資源の増大はそれを好む捕食者の増大を引き起こすことが予測されるが、低木層のクモ群集組成に腐食連鎖由来の資源流入の増大が影響を及ぼす事は立証されていない。本研究では、伐採後の植生遷移過程において生じる生食・腐食連鎖由来のエサ資源可給性の変化とクモの機能群・種組成変化が、クモによるエサ資源利用にどのように影響するのかを検討する。

クモのエサ組成を解析するために、伐採後の林齢の異なる5調査地でそれぞれクモ、双翅目、樹上トビムシ、植食昆虫の炭素窒素安定同位体比を分析した。調査地ごとのソースミキシングによって求めたエサ寄与率を、その場のエサ可給性、クモの機能群、クモの種毎の優占時期によって説明するモデルから、植生遷移過程でのエサ供給量の変化・クモ群集変化の両要因の影響を解析した。その結果、植生遷移に伴って双翅目の可給性が増大し、これに対応して双翅目寄与率の増大と植食昆虫寄与率の減少が起きていた。機能群・種ごとの優占時期によって各エサの寄与率は異なり、特に遷移後期種は初期種に比べて双翅目寄与率が高く、植食昆虫寄与率が低いことが分かった。つまり遷移後期には、遷移後期に増大するエサ資源 (双翅目) を多く利用する種が優占していた。これは、植生遷移過程におけるクモの種組成変化が、双翅目供給の増大というエサ環境の変動に対する応答として生じていることを示している。


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