| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-07 (Oral presentation)

君と出会う日のために:テントウムシにおける生態的形質置換

*鈴木紀之(東北大・生命科学),大澤直哉(京大森林生態)

負の種間相互作用は形質置換をもたらしうるが、その反面、一方の種の絶滅(競争排除)を引き起こすこともある。どのような条件が形質置換の実現には必要なのだろうか? 本研究では捕食性テントウムシを対象とし、「種間相互作用が生じる前に、資源利用形質がある程度特殊化していた可能性」に着目した。

ナミテントウとクリサキテントウは本州では同所的に分布しており、前者はジェネラリストで後者はスペシャリストである。クリサキは飼育下ではさまざまなエサを食べられるものの、野外ではマツ類につく捕まえにくいアブラムシに特殊化している。先行研究によって、繁殖期にナミから受ける負の効果(繁殖干渉)がクリサキの特殊化を促進したことが示唆されている。

そこで本研究では、ナミのいない南西諸島においてクリサキの食性幅と資源利用形質を調べた。その結果、南西諸島個体群ではマツ類だけでなくさまざまな生息環境を利用していることが明らかになった。ただし、南西諸島個体群の資源利用形質は本州のクリサキとナミの中間的な値を示した。

亜熱帯ではアブラムシ全般の密度が低いため、クリサキは比較的安定的な資源であるマツ類のアブラムシにある程度依存しているのかもしれない。そのため、ナミとの種間相互作用が生じる前に、マツ類のアブラムシに資源利用形質を適応させていた可能性がある。これは「2種の形質があらかじめ異なっている場合に形質置換が促進される」という理論の予測を定性的に支持するものである。


日本生態学会