| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-10 (Oral presentation)

エッジ効果は季節によって異なるか?ゴミムシによる検証

*大脇淳,金子洋平(新潟大・朱鷺セ),池田紘士(森林総研)

二次林と耕作地が入り組む里山では、林縁が豊富に存在するため、里山の生物群集を理解するためには、林縁に対する生物の反応を理解する必要がある。温度、日当たり、湿度などの環境条件は、気温の高い真夏ほど林内と開けた場所で差があると考えられ、これと関連して以下の2つの仮説をたてた:(1)森林性の種は、暑い夏は林外に出ないが、涼しい春や秋には林外で活動する個体が増える、(2)草地性の種は、夏になると暑さを避けて林内に入る個体が増える。以上の仮説を検証するために、林縁から草地と林内にそれぞれ22.5mまでひいたトランセクトを設置し、6月上旬、8月下旬、10月下旬の3シーズン、ピットフォールトラップによってゴミムシ類を調査した。

合計34種448個体のゴミムシが採集された。ゴミムシの種構成は6月上旬と8月下旬は似ていたが、10月下旬は他のシーズンと大きく異なっていた。種数、個体数は、6月上旬と8月下旬には草地の林縁から約5m地点に明瞭なピークを形成したが、10月下旬には林縁部にピークを形成した。予想に反して、森林性の種は、最も暑い8月下旬には草地側でも捕獲されたが、6月上旬と10月下旬には林縁を境に草地側ではほとんど捕獲されなかった。草地性の種は、どのシーズンでも草地の林縁に近い場所にピークを形成したが、8月下旬は林内でほとんど捕獲されなかった。2シーズンである程度の個体数が捕獲された3種について種レベルで見ると、2種は出現パターンがシーズンによって異なっていた。以上の結果より、当初の仮説は棄却され、捕獲パターンはむしろ予想と逆であった。これらの結果は、ゴミムシ類は夏の高温を避けて生息環境を変えることはなく、彼らの行動は餌量や越冬場所など他の要因に左右されていることを示唆している。


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